Nu Disco(ニューディスコ)とは – 音楽ジャンル Part 1

意味
表記:Nu-Disco、Nu Disco
(NewでなくNuを使ったりハイフンを足したりするのは固有名詞化のため)
類語:Disco House(ディスコ・ハウス)、Electro Disco(エレクトロ・ディスコ)
Nu-Disco(ニュー・ディスコ)とは70年代~80年代のUSディスコ、80年代初期のイタロダンス、フレンチ・ハウスそしてその他のシンセを多用したヨーロピアン・ダンスミュージックへの再注目と関連した、21世紀のダンスミュージック・ジャンルを指します。
オンラインミュージック店との関わり
このジャンルは特に2000年代中盤に人気となり、また2010年代中盤にも小規模な再復活のブームが起こりました。”ニュー・ディスコ”という呼び名は2002年の初期と2008年の中期において、Juno(ジュノ)やBeatport(ビートポート)のようなオンラインミュージック店で使用されたものでした。
元々、彼らはこのジャンルをクラシック・ディスコのレコードのRe-Edit(リエディット)曲や、このスタイルの楽曲を作った一握りのヨーロッパのエレクトロニック・プロデューサー達と関連付けていました。ニュー・ディスコという名称は、新しいディスコソングを指すのとは別に、エレクトロクラッシュやフレンチ・ハウスと関連するアメリカのレーベルを解説するためにBeatport(ビートポート)で使われていた言葉でもありました。
(※エレクトロクラッシュ:80年代ニュー・ウェイヴ、ポストパンク、エレクトロ、ディスコ等を元に再構築を行った音楽ジャンル)
定義
2002年には、インディペンデント誌がNu-Discoを70年代ディスコ/ファンクに現代のテクノロジーと繊細な楽曲制作を適用した結果、誕生した音楽と評しました。
そして2008年にはBeatport(ビートポート)がNu-Discoを70年代と80年代初期の(エレクトロ)ディスコ、ブギー/コズミック/バレアリック/イタロディスコの延長線上にある音楽と記載しました。
同年にSPINマガジンはインストゥルメンタルのSpace Disco(スペース・ディスコ)や70年代後半~80年代前半のItalo Disco(イタロ・ディスコ)を含むユーロディスコ・サウンドがNu-Disco(ニューディスコ)に大きく影響していると指摘しました。
2015年の時点でBeatport(ビートポート)や Traxsource(トラックスソース)のようなオンラインミュージック店では、旧譜のリミックスやディスコエディットが、オリジナルの楽曲と並んで販売されています。
音楽データベースDiscogs(ディスコグス)によれば、一部のNu-Discoは、元の時代のディスコトラックとブギートラックを(場合によってはエフェクトを追加して)単に再編集しただけのものです。また一部のNu-Discoは、スローダウンした「スローモーション」/「コズミック」スタイルです。また高速でハードなものも含み、エレクトロ、エレクトロクラッシュ、ディスコ、ハウスとの類似性に応じて、「エレクトロディスコ」「エレクトロハウス」という風に、より正確に説明することもできます。
備考
具体的には1997年~2002年の期間で完成していたフレンチ・ハウス/フィルター・ディスコ/バレアリック・ビートとそれらを継承した楽曲、さらに70s後半~80sディスコをアレンジした楽曲を加えたユーロディスコの集合体を指しています(ただし原曲の多くは米国製)。Nu Discoという大きな括りでまとめる事により国籍や特定のクラブカルチャーから離れ、一般的に理解されやすくなっただけであると解釈して差支えないでしょう。
画像はDaft Punk(ダフト・パンク)のThomas Bangalter(トーマ・バンガルテル)が1997年に手掛けた Stardust(スターダスト)の「Music Sounds Better With You」。当時はフレンチハウス・アンセムの扱いでしたが、現在はニューディスコ・アンセムとも呼ばれる曲です。
関連:Filter Disco(フィルター・ディスコ)
別名:Filter House(フィルター・ハウス)・French Touch(フレンチ・タッチ)・tekfunk(テックファンク)
ディスコミュージックの断片にAudio Filter(オーデイオ・フィルター:帯域カット)とPhaser(フェイザー:位相シフト=ジェット)のサウンドエフェクトをかけてループさせ、それにリズムトラックを組み合わせて制作された楽曲。

ディスコのサンプリング音が歪んだりこもったりしながら、うねるように聞こえるのが特徴です。(動画の中でも Hypnotizing Vibe と表現されています。)
フレンチ・ハウスのジャンルから生まれた手法で、Daft Punk(ダフト・パンク)の曲もこのカテゴリに入ります。初期のNu Discoを構成する重要な要素の一つであり、2022年現在のディスコハウスでも現役で活用されています。
Nu Discoの代表曲・関連曲
90年代後半~2000年
Eden [2015]仏
Daft Punk、Dimitri From Paris、Cassiusなどが活躍したフレンチ・タッチ黎明期を描いたフランス映画!

フレンチハウス・ブームの原点、Around The World
Daft Punk – Around The World [1996]仏

Daft Punk – One More Time [2000]仏

90s Disco-House(ディスコハウス)
現代のディスコハウスの原型にもっとも近い、ウィーン拠点のテクノ/ハウスDJ、Giant WheelことClemens Neufeld(クリーメンス・ノイフェルド)の有名曲/ピークタイムトラック。原曲は1981年The Brothers Johnsonの「The Real Thing」。NYのガラージハウス専門レーベル Strictly Rhythmより。
Giant Wheel – Retrash [1995]オーストリア

フィルター適用前のフレンチ・タッチの祖、Hear The Music
ダフト・パンクがヘビープレイし、フレンチハウス・ブームの火付け役となったと言われる故ポール・ジョンソン(2021年8月4日コロナで逝去)の名曲。現在もなおダフト・パンク作品の底流にあるブギー・サウンドです。1980年の原曲と合わせて。
Paul Johnson – Hear The Music [1996]米 Chicago

Unlimited Touch – I Hear Music In The Street [1980]米NY Boogie/Disco

初期フレンチタッチ/フィルターディスコの有名曲
Cheek - Venus (Sunshine People) [1996]仏

アンセム、Stardust – Music Sounds Better With You
97年にわずか1曲だけをリリースして解散したワンオフ企画ユニット、スターダストのこのヒット曲が、ちょうどフレンチ・ハウス(フレンチ・ディスコ)とNu Discoの境界線上にある曲です。1998年夏のイビザを席捲したクラブ・スマッシュ! ハウスミュージックの主導権を欧州勢が握った象徴的な曲です。
Stardust – Music Sounds Better With You [1997]仏

Music Sounds Better With You サンプリング曲
Chaka Khan – Fate [1981]米

Armand Van Helden – You Don’t Know Me
90年代後半、誕生より10年を迎えたハウス・テクノの退屈なまでに行き過ぎたミニマル化もしくはソウルミュージック化(つまり洗練はされたが燃料切れを起こし単調になっていた)への反動として、ダンスミュージックのメインストリームがビッグ・ビートやワープハウス、ニューディスコ等へ移行しはじめた頃、ダフトパンクと並び時代のキーマンであったアーマンド・ヴァン・ヘルデンのこのヒット曲が、ちょうどガラージ・ハウス(ディープ・ハウス)とNu Discoの境界線上にある曲です。
普通のガラージよりもドカスカ聞こえるのはヴァン・ヘルデンがSpeed Garage(スピード・ガラージ)に採用する事となったダッチテクノ名作 Plastic Dreams(1992) のリズムトラックを重ねているからです。米国もフィルターディスコの手法を使い始めたという一例。
Armand Van Helden – You Don’t Know Me [1998]米

You Don’t Know Me 原曲
Carrie Lucas – Dance With You [1979]米 Disco

Jaydee – Plastic Dreams [1992]蘭

Phats & Small – Turn Around
こちらは英国のStardustフォロワーで、フィルター・ハウスの典型例です。原曲は1980年イタリアの「Change – Glow Of Love」。Smallさんは後にFreemasons(フリーメイソンズ)としても活躍します。
Phats & Small – Turn Around [1998]英

Cassius – Cassius 1999 [1998]仏
原曲は1982年ドナ・サマーの「(If It) Hurts Just a Little」。

Wamdue Project – King of My Castle [1998]米

バレアリックの代表曲、Moloko(モロコ)の Sing It Back
「時計じかけのオレンジ」に登場する麻薬入りミルクから命名したエレクトロポップ/ダンスポップ・デュオ、モロコの名曲。イビザのバレアリック・カルチャーを意識した妖艶で退廃的なPVに仕上がっています。Balearic Beat(バレアリック・ビート)とは何かと問われたら、この曲を挙げておけば間違いありません。
Moloko – Sing It Back [1998]英

Madison Avenue – Don’t Call Me Baby
イタロディスコを継承したNu Discoの有名曲!
Madison Avenue – Don’t Call Me Baby [1999]豪

Don’t Call Me Baby 原曲
Pino D’Angio – Ma Quale Idea [1980]伊

さらにそのMa Quale Idea の元ネタ曲で3連芋づる式!
オリジナルのベースラインはフィリーディスコの超有名曲! USA!USA!
McFadden & Whitehead – Ain’t No Stopping Us Now [1979]米 Philadelphia

Triple X – Feel The Same [1999]伊
UKソウルバンド Delegation(デレゲーション)1979年の名曲「You and I」を使用したイタリア発のディスコハウス・アンセム!

Delegation – You and I [1979]英

Bob Marley Vs Funkstar De Luxe – Sun Is Shining (De Luxe Edit) [1999]デンマーク

Ministers De-La-Funk feat. Jocelyn Brown – Believe [1999]米
Erick Morillo、Harry “Choo Choo” Romero、DJ Sneak(Carlos Sosa)からなるユニットのヒット曲。

Pete Heller – Big Love [1999]英

The Ones – Flawless [1999]米

Les Rythmes Digitales – Jaques Your Body (Make Me Sweat) [1999]仏/英

ATFC feat. Lisa Millett – Bad Habit [1999]英

ビッグビート陣からも1曲。原曲は1980年Locksmithの「Far Beyond」。
Basement Jaxx – Red Alert [1999]英

Demon vs. Heartbreaker – You Are My High [1999]仏

原曲)The Gap Band – You Are My High [1979]米 Funk/Soul

原曲はダンクラの名曲 Ray Paker Jr. & Raydioの「It’s Time To Party Now」
DJ 88 KEYS – Everybody Up [1999]独

フレンチハウスのアンセム、Modjo(モジョ)のLady
Modjo – Lady (Hear Me Tonight) [2000]仏

Lady 原曲
オリジナルはナイル・ロジャース率いるChic(シック)の曲でした! 合衆国パワー恐るべし
Chic – Soup For One [1982]米

Spiller – Groovejet (If This Ain’t Love) [2000]伊

Groovejet 原曲
この曲の肝となるヴァイブ(鉄琴)はサルソウル・オーケストラのリーダー、故ヴィンス・モンタナ大先生、ドラミングはアール・ヤング師匠でした! 結局行き着くところはUSディスコ全盛期
Carol Williams – Love Is You [1976]米

原曲は1979年フランスの「Sheila & B. Devotion – Spacer」。
Alcazar – Crying At The Discoteque [2000]スウェーデン

原曲は1978年フランスの「Jo Bisso – The Mistery With Me」。
Bel Amour Featuring Sidney – Bel Amour [2000]仏

Alan Braxe & Fred Falke – Intro [2000]仏
1985年のJets(ジェッツ)のヒット曲「Crush on You」の間奏部を使い、Daft Punkと同様のディスコ・ベースラインを持つクラシックなフレンチ・ハウス。

The Jets – Crush on You [1985]米

Ann Nesby – Lovin’ Is Really My Game [2000]
原曲は1977年Brainstormの「Lovin’ Is Really My Game」。

Part 2に続く