Deep House(ディープ・ハウス)とは – 音楽ジャンル

公開日:  最終更新日:2018/12/13

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Deep House(ディープ・ハウス)

意味

狭義のDeep House

1988年2月、英国レスター・スクウェアにあるエンパイア劇場で開催されたイベント「Deep House Convention」が語源で、これは米国から招いたレジェンダリーDJ、Marshall Jefferson(マーシャル・ジェファーソン)と Frankie Knuckles(フランキー・ナックルズ)に対して敬意を込め、享楽的で商業主義的なハウスの楽曲とあえて区別するために命名された言葉でした。

この名称は、誕生当時はハウスミュージックのサブカテゴリ名ではなく、主にイベントやコンピレーションのためのキャッチフレーズとして使われていました。(一方で、アシッドハウス、ヒップハウスといったサブカテゴリは既に存在していました。)

曖昧な定義のまま生まれた「ディープハウス」という言葉ですが、厳密な本来の意味合いを「狭義のディープハウス」とするならば、フィリーディスコを原点としたシカゴ・ハウスおよびNYガラージ・ハウスの系譜にあるソウルフルでジャジーなハウスミュージックを指していると言えます。

電子音楽化と反復化

そしてハウスミュージック(現在のディープハウス)は、単にFour on the floor(4つ打ち)に乗せて電子音楽化されたディスコミュージックではなく、誕生時にもう一つ重要なコンセプトを持っていました。(電子化よりもこちらの方が先で、こちらの方が革新的でした。)

それは、過去のダンスミュージックとフロアの反応に対する考察を元にクラブDJ達によって生み出された「ディスコソングの一番気持ち良いパートやフレーズ、リズムに特化して反復する」という編曲方法です。

(それ以前のダンスミュージックでは歌としての完成度が優先されていたため、ダンスフロアにいる客はそのパートがくるのを待ちわびるしかなかったのです。1970年代後半にはWest End Records等によるディスコソングの12inch盤リリースによって反復化を必要とするムードが既に醸成されていました。)

デトロイト・テクノにも継承されたこの手法は、単に歌モノを打ち込みに置き換えたポップス系のハウスとは異なる、大きな特徴となっています。

電子化以前の例として、この反復化はロン・ハーディがオープンリール・テープデッキと2台のターンテーブルを使ってアイザック・ヘイズの「I Can’t Turn Around」を元に、生音の段階でやってのけています。後にシカゴハウスの2つのアンセム「J.M. Silk – I Can’t Turn Around」「Farley Jackmaster Funk – Love Can’t Turn Around」へと転化していった曲です。

Isaac Hayes – Can’t Turn Around ( Ron Hardy’s Edit) [1983] Chicago

オリジナル曲

たしかにクラブDJならばこの曲の後半部だけを使いたくなりますよね。イントロから最後まで流しちゃう頑固なDJ、David Mancuso(デヴィッド・マンキューソ)でない限り…。

Isaac Hayes – I Can’t Turn Around [1975]

 

特にJ.M. Silkの「I Can’t Turn Around」はNYでも熱狂をもって受け入れられ、この1曲だけを深夜から朝までぶっ通しでMIXしながらリピートしていたクラブもありました。また空気を読まずユーロビートを流し続けたDJがクラブオーナーに殴られ、J.M. Silkの曲を流すハウスDJに交代させられたというエピソードもありました。

電子音楽としての面からはすでにPaul Hardcastle(ポール・ハードキャッスル)のようなインストゥルメンタリストから「19(ナインティーン)」のような大ヒット曲が出ていたり、Hi-NRG(ハイエナジー)の分野でもローランドのTRサウンドは活用されていたため技術的に驚くほどのことはありませんでしたが、ディスコミュージックの反復化と複合することで衝撃的なインパクトのある新しい音楽ジャンルが誕生してしまったということです。ちなみにJ.M. Silkとは、Farley “Jackmaster” FunkとSteve “Silk” Hurleyのあだ名を合体させたコンビ名です。

J.M. Silk – I Can’t Turn Around [1986] Chicago


Farley Jackmaster Funk – Love Can’t Turn Around [1986]

 

逆に電子化だけが先行してしまったケース

以下は1985年、後に名声を得るシカゴハウスのプロデューサー達から最初にリリースされたレコード(それ以前はカセット販売)、Frankie Knuckles(フランキー・ナックルズ)& Jamie Principle(ジェイミー・プリンシプル)の「Waiting On My Angel」です。前述の反復化コンセプトを持つ前にリリースされた曲ですが、単なる電子ポップス・電子ディスコにしか聞こえず、正直まだハウスと呼べた代物ではありません。

つまりざっくり言ってしまえば、フランキー・ナックルズの電子化ディスコミュージックにロン・ハーディのループ・コンセプトが結びついて誕生したのがハウスミュージックであると言えます。

Jamie Principle – Waiting On My Angel [1985] Chicago

 

参考)mixmag – ”その曲はディープハウスじゃない!”

参考)reddit – ”なぜディープハウスを選定するのにそれほど混乱が生じるのか? 真のディープハウスとは?”

 

ディープハウス至上主義

”Not Everyone Understands House Music.”

Not everyone understands house music

1997年にエディー・ アマドールが生み出し、後にディープハウスのキャッチフレーズとなったメッセージ ”Not Everyone Understands House Music.(誰しもがハウスミュージックを理解できる訳ではない)”。 商業主義的な音楽しか解さないリスナーとの間に一線を引き、ディープハウスこそが至高のダンスミュージックだと位置付けるエリート主義的なフレーズとも言えます。

BBC Radio 1 のダンス部門においてこのキャッチフレーズを掲げたキャンペーンを張ったり、ハウス黎明期のDJ達が設立したオンラインショップ、Traxsource(トラックスソース)が同様のキャッチコピーを社の旗印としていることからも、ディープハウス至上主義を根強く支持する層が存在していることが分かります。

この思想はラスベガスの興行主たちが牽引する2010年以降のEDMブームが隆盛を極めるにつれ、「EDM系ダンスミュージックとの対立」という形で表面化し、軋轢を生んでゆきます。古参のハウスDJ達がEDMを「ベガス」という暗喩で呼ぶ理由はここにあります。

この対立軸が明確である限り「EDMはElectric Dance Musicの略なのでハウスもEDMの一種である」といった机上の空論は、30年前から電子化ダンスミュージックの宗主を自認しているハウスDJ達からすれば受け入れられないと言えるでしょう。

Eddie Amador – House Music [1997] LA(1分30秒~)

 

The Black Madonna マニフェスト


出典:THE BLACK MADONNA MANIFESTO
出典:The Black Madonna | クラベリア

以下は、故フランキー・ナックルズらの意思を継ぎアンチ商業主義/原点回帰の崇高な理想を掲げた、ディープハウス至上主義の急先鋒として知られるシカゴの女性DJ、The Black Madonna(ブラック・マドンナ)の声明文です。自ら設立したレーベル「We Still Believe」の名称にもディープハウス復権への強い信念が表れています。

「ダンスミュージックはライオットガールを必要としている。ダンスミュージックはパティ・スミスを必要としている。ダンスミュージックはDJスプリンクルズを必要としている。ダンスミュージックはその陶酔による不快感を必要としている。ダンスミュージックは傷に塗る塩を必要としている。ダンスミュージックは40歳以上の女性達を必要としている。ダンスミュージックはプレイする為に子供達を眠らせるおっぱいを必要としている。ダンスミュージックは戯言にリアルに疲れている風変わりな気難しいティーンエイジャー達を必要としている。ダンスミュージックはライターや批評家やアカデミックや歴史家を必要としている。ダンスミュージックは貧しい人たちやクラブに入る為のちゃんとした靴を持っていない人たちを必要としている。ダンスミュージックは襟のないシャツを必要としている。ダンスミュージックは全部の週もがいている人達を必要としている。ダンスミュージックはフルの入場料を払えない為に夜中前に来なければならない人達を必要としている。ダンスミュージックは現場維持を必要としていない。」

 

2018年9月24日(再放送10月28日)

Can You Feel It ~ 如何にしてダンスミュージックは世界を制覇したか

Black Madonnaがダンスミュージックの歴史を詳しく解説する貴重な1時間特番!MFSBのアール・ヤングによるFour on the floor(4つ打ち)からハウス・テクノの誕生までを網羅!Part 2ではデヴィッド・マンキューソの「Loft」とラリー・レヴァンの「Paradise Garage」を解説。


Can you Feel It- How Dance Music Conquered the World. Episode 1 Part 1


Can You Feel It- How Dance Music Conquered the World. Episode 1 Part 2
Can You Feel It – How Dance Music Conquered the World. Episode 1 Part 3

 

 

 

参考)Modulations: A History of Electronic Music: Throbbing Words on Sound
Peter Shapiroによる同タイトルのサブカル本を1998年に映画化


Modulations – cinema for the ear

 

ハウスミュージックのカテゴライズ

「ディープハウス」という言葉は少なくとも90年代中盤頃まではキャッチフレーズとして頻繁に使われたものの、このような大雑把な名称は当時のカテゴライズには用いられておらず、実際には2000年以降に一般化したカテゴリ名称でした。

例)2000年に設立されたDiscogsにおける1990年のNYガラージ・ハウスの表記

つまり現在のジャンル分けは過去の音源に遡及した結果にすぎず、だからこそ、80年代~90年代のどの楽曲を指すかについてもよく議論のテーマに挙がります。

ディープハウス系として挙げられるクラブ/イベント

 

広義のDeep Houseの登場

ただし最近では拡大解釈された「広義のディープハウス」の意味合いでも使われています。

こちらは歴史的経緯と無関係に、その名のごとく「Deep(ディープ)」という言葉の意味をそのまま感覚的に受け止めた用法です。

2010年代からTech House(テック・ハウス)の変種としてのポップス志向のハウス、Wankelmut、Klangkarussell、Robin Schulz、Felix Jaehnなどの楽曲が ディープハウスの名目で販売されはじめましたが、本来のディープハウスとは全く関連性が無いものでした。

EDMとハウスのボーダーラインからはコチラ側にあり、ちょうどテック・ハウスやトロピカルハウスと接したサウンドの曲が多くみられます。単なるパーティーソングではない、落ち着いたトーンの曲調からディープだと感じられてもおかしくない曲を含んでいます。

新定義のディープハウスが登場した背景には、DTMの進歩によりハウスの楽曲スタイルで「踊れるポップス」をリリースするのが容易になってしまった事情があると言えます。その気になれば古典風のハウスも作れるがその再現にとどまるつもりはない、といった姿勢と技術的余裕も伺えるので、一概に否定するわけにもいきません。

Larry Leavan(ラリー・レヴァン)の影響下にあるアンダーグラウンド・ダンスミュージックとは全く異なる曲調のハウスであるため、古典派からは指摘を受け続けていますが、プログレッシブ・ハウス等「ハウス」の名を冠したEDM系の楽曲と明確に区別できる便利さもあり、実際にはもう少し柔軟な解釈で使われているようです。

 

狭義のDeep Houseの例

挙げればキリがないため、メジャーなところで一例にとどめます。

シカゴハウス・アンセム Move Your Body

郵便局で働いていたマーシャル・ジェファーソンが生み出したアンセム曲。ピアノ演奏が入っているために当初はハウスとみなされていなかったものの、ロン・ハーディ、フランキー・ナックルズの助力を得てシカゴハウスの大ヒットとなった曲です。

Marshall Jefferson – Move Your Body (Mixed by Ron Hardy) [1986] Chicago

 

Acid House(アシッドハウス)

DJ Pierre(DJピエール)が1987年にPhuture(フューチャー)名義で制作し一般的に歴史上初のアシッドハウスと言われている「Acid Tracks」の前年1986年にリリースされた、プレ・アシッドハウスとでも呼ぶべき微妙な位置付けであるディープハウスの代表曲、Larry Heard(ラリー・ハード)の「Can You Feel It」です。

「Acid Tracks」は1985年に制作され実際にリリースされたのは1987年でしたが、その間の1986年にSleezy D(実質マーシャル・ジェファーソン)から「I’ve Lost Control」がリリースされました。このためRoland TB-303のレゾナンス(共振)を用いたアシッドサウンドの曲としてレコード化された最初の曲となっています。

(※ 紛らわしいのですが実はTB-303のアシッドサウンドは後から命名された名前でアシッドハウスの必須の要件ではありません。「D-Mob ‎– We Call It Acieeed」の例など。当時はウネウネしてさえいればOKで、だからこそJunoを使用したラリー・ハードのCan You Feel Itもアシッドハウスとみなす向きがあり、DiscogsにこっそりとAcid Houseとして登録されているのです。)

アシッドハウスの流行の舞台はUKに移り「A Guy Called Gerald – Voodoo Ray」のようなヒットと共にスマイリーフェイスがシンボルとして使われ、DCコミックスのWatcmen(ウォッチメン)から引用した血糊のついたスマイリーのバリエーションも登場しました。

Fingers Inc. – Can You Feel It [1986] Chicago


Sleezy D(Marshall Jefferson & Sleezy) – I’ve Lost Control [1986] Chicago


Phuture (DJ Pierre) – Acid Tracks [1987] Chicago

 

後にマイケル・ジャクソンのプロデュースも手掛けることになるサンプリングの鬼才、Todd Terry(トッド・テリー)がRoyal House名義で制作した原曲「Can You Party」を挙げるべきですが、その亜種であるラップを乗せたヒップ・ハウス版、ジャングル・ブラザーズのバージョンを挙げておきます。そしてこれらの曲もまたマーシャル・ジェファーソン「Move Your Body」の断片から成り立っています。

Jungle Brothers – I’ll House You (Arranged By Todd Terry) [1988] NY

 

Underground Solution (Roger Sanchez) – Luv Dancin’ [1990] NY

 

Fingers Inc.としてLarry Heard(ラリー・ハード)と活動を共にした彼の弟子、ヴォーカリストでもあるRobert Owens(ロバート・オーウェンズ)の大ヒット曲。実質的にDavid Moralesと富家哲のコンビによるプロデュース曲。

Robert Owens ‎- I’ll Be Your Friend [1991] Chicago

 

現在のSoulful Houseと呼ばれるカテゴリのテンプレートとなったMasters At Work(マスターズ・アット・ワーク)。名曲の多いジャンルですが、その完成度の高さと引き換えにハウスの革新性を抑え込み固定化してしまったという功罪の両面を持ちます。NYガラージ・ハウスは定型化し、これ以降はUKと欧州が中心となってハウスの進化を担ってゆきます。

Barbara Tucker – Beautiful People (Produced by Masters At Work) [1994] NY

 

誕生後10年を経てひととおりの完成をみたハウスミュージックは、90年代後半からより実験的な方向に進み、趣味人の音楽としてアンダーグラウンド化してゆきます。原曲は1978年Chick(ナイル・ロジャース)の大ヒット曲「I Want Your Love」。

Moodymann – I Can’t Kick This Feelin When It Hits [1996] Detroit

 

Pépé Bradock – Deep Burnt [1999] 仏

 

Dj Sprinkles – Hush Now [2010] 米(現在は川崎在住)

 

DJ KOZE – Magical Boy [2015] 独

 

The Black Madonna – He Is The Voice I Hear [2016] Chicago

 

広義のDeep Houseの例

それを表現するのにふさわしい言葉がないため、結果的にDeep Houseとされる例です。

 

Chris Malinchak – So Good To Me

発売当時はDeep House(ディープハウス)として売り込まれ、イビザ・アンセムとなった曲ですが、実質的にはテックハウスの変種であるトロピカルハウスとみなされます。

Chris Malinchak – So Good To Me [2012]米

 

Duke Dumont – Need U (100%) feat. A*M*E [2013]

 

Secondcity – I Wanna Feel [2014]

 

Route 94 – My Love (Official Video) ft. Jess Glynne [2014]

 

David Zowie – House Every Weekend [2015]

 

Dusky – Cold Heart [2017]

 

 

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