IDM / Intelligent Dance Music(インテリジェント・ダンス・ミュージック)/Electronica(エレクトロニカ)とは – 音楽ジャンル

公開日:  最終更新日:2023/12/12

The 50 Best IDM Albums of All Time – Pitchfork

The 100 greatest IDM tracks – FACT Magazine

List of intelligent dance music artists – Wikipedia「IDMリスト」

意味

 

IDM(Intelligent Dance Music)は、90年代初頭に登場したエレクトロニックミュージックのジャンルであり、ダンスよりもホーム・リスニングに適した実験的もしくは知性的なサウンドを特徴としています。

デトロイトテクノ、アシッドハウス、UKブレイクビート(主にドラムンベース)からアンビエントミュージックやその他のエレクトロニックミュージックまで、さまざまなソースの影響を受けていますが、スタイル的には、IDMは特定ジャンルの様式を志向するものではなく、個人主義的な実験に依拠する傾向があります。

この言葉は 1993年米国において、WarpレコードのコンピレーションCD「Artificial Intelligence (1992年)」に関しイギリスの優れたアーティストについてディスカッションするためのメーリングリスト上で作成された、「IDMリスト」が元となっています。

関連する主なアーティストとして、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、Black Dog(ブラック・ドッグ)、The Orb(ジ・オーブ)、Autechre(オウテカ)、Luke Vibert(ルーク・ヴァイバート)、Squarepusher(スクエアプッシャー)、Boards of Canada(ボーズ・オブ・カナダ)などが挙げられます。

ただし、IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)という言葉自体は、エリート主義的であり他の音楽スタイルに対して中傷的であるとして、エイフェックス・ツインや μ-Ziq(ミュージック)を含む(IDMとみなされた)アーティスト達から批判され、拒絶されています。

このようにインテリジェント・ダンス・ミュージックという言葉は広く非難されているものの、2014年の音楽批評家のサシャ・フレール・ジョーンズの考察によれば、依然として一般的に使われているとされています。

 

µ-ziq – within a sound [1995]英

Aphex Twin – Girl / Boy Song [1996]英

Leftfield – Phat Planet [1999]英

Leftfield – Phat Planet 関連動画を表示

 

 

Pitchfork:The 10 Best IDM Albums

FACT Magazine:The 100 Greatest IDM Tracks(>で次曲へ)

 

 

Ambient techno(アンビエント・テクノ)

1980年代後半にアシッドハウスや初期のレイブの波に乗って、The Orb(ジ・オーブ)やThe KLF(ザ・ケイエルエフ)のようなイギリスのグループは、アンビエント・ミュージックと融和したハウスミュージック(特にアシッドハウス)である、アンビエント・ハウスを制作しました。

The KLF – Chill Out [1990]

ハードコアテクノ~レイブで育った世代にアンビエントを紹介し、イビザのチルアウト・ミュージック定番となった曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Little Fluffy Clouds 」。David Mancuso(デヴィッド・マンキューソ)のロフトクラシック入りしたマッドチェスター・トラック!

The Orb – Little Fluffy Clouds (Original Mix) [1990]

この「アンビエント・ハウス」という言葉は、”ダンスだけでなくリスニングに適している”とみなされた当時の電子ダンスミュージックに対し、無差別に適用されていました。

並行して、テクノでは、イギリスのエイフェックス・ツイン、日本のテツ・イノウエなどが、アンビエントや他の実験音楽の要素を持ったメロディックでリズミカルなダンスフロア志向のテクノ、「アンビエント・テクノ」と呼ばれる楽曲を制作していました。

この実験的な音楽は1990年代初頭までに増加し、主にイギリスのレコードレーベルから様々なバリエーションの優れた楽曲がリリースされました。

有名なレーベルとして Warp (1989)、Black Dog Productions (1989)、R&S Records (1989)、 カール・クレイグのPlanet E、 Rising High Records (1991)、 リチャード・ジェームス(エイフェックス・ツイン)のRephlex Records (1991)、カーク・ディジョージオのApplied Rhythmic Technology (1991)、Eevo Lute Muzique (1991)、General Production Recordings (1989)、Soma Quality Recordings (1991)、Peacefrog Records (1991)、 and Metamorphic Recordings (1992)などが挙げられます。

 

インテリジェント・テクノとエレクトロニカ

(日本ではインテリ・テクノと略する場合も)

1992年、Waprレコードから「Artificial Intelligence」シリーズの最初のコンピレーションアルバムがリリースされたのが事の始まりでした。

「Warpのエレクトロニック・リスニング・ミュージック」とサブタイトルが付けられたこのレコードはAutechre(オウテカ)、B12(ビートゥエルブ)、The Black Dog(ブラック・ドッグ)、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、The Orb(ジ・オーブ)らが別名を使用した曲を収録していました。このレーベルからリリースされた電子音楽を、Warpの共同オーナーであるSteve Beckettは、「ポスト・クラブ、ホーム・リスニングの聴衆を対象としている」と語っています。

「Artificial Intelligence」シリーズが成功した後、「インテリジェント・テクノ」は好感を持たれましたが、ハイブリッド形式でありながらxxxxハウスやxxxxテクノといった接尾語を取り払って「アンビエント」と表現しても共通の同義語とみなせるような音楽でした。

同時期 (1992–93)には、「アート・テクノ」、「アームチェア・テクノ」「エレクトロニカ」などの名前も使われ、いずれも「エレクトロ・ダンス・ミュージック」の新境地を表現しようと試みていましたが、それらは自宅で楽しむための音楽でした。

その頃イギリスでは、早くもありきたりになってしまった過激なブレイクビートとサンプリングによるHardcore techno(ハードコアテクノ)の楽曲が、音楽市場にあふれていました。Rave(レイブ)は汚らわしいワードとなってしまっていたため、代わりにロンドンのナイトクラブは「インテリジェント」もしくは「ピュア」なテクノをプレイすると宣伝し、ハードコアサウンドが商業的すぎると感じていた耳の敏感な客にアピールしたのです。

そして1993年には、New Electronica、Mille Plateaux、100% Pure、Ferox Recordsといった「インテリジェント・テクノ」「エレクトロニカ」の新レーベルが登場しました。

 

The IDM List(IDMリスト)の誕生

1991年~1992年: Intelligent Techno

1991年11月、Usenetのフォーラムにおいて Coil(コイル)のEP「The Snow」のリファレンス上で初めて「Intelligent Techno(インテリジェント・テクノ)」というフレーズが登場します。

Coil – The Snow [1991]

インターネット以外では1992年後半に、Jam & Spoon(ジャム・アンド・スプーン)のEP「Tales From A Danceographic Ocean」、そしてThe Future Sound of Londonの音楽を解説するリファレンス上でアメリカとイギリスの出版社から同じ「Intelligent Techno(インテリジェント・テクノ)」というフレーズが登場しました。

Jam & Spoon – Stella (“Tales From A Danceographic Ocean” EP) [1992]

アシッドハウスのピークが縮小し始めた頃、ブレイクビーツにテクノとアンビエント・サウンドを融合させた幻想的な曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Papua New Guinea」。

The Future Sound Of London – Papua New Guinea [1991]

Papua New Guinea 原曲を表示

 

1993年~現在: Intelligent Dance Music(IDM)

このフレーズのもう一つの例は、1993年4月のUsenetのフォーラムで、The Black Dog(ブラックドッグ)のアルバム「Bytes」※ に関するリファレンスでの例です。

※ 93年にワープ・レコーズの「Artificial Intelligence」シリーズの一つとしてリリースされたアルバム『Bytes』(Black Dog Productionsのコンピレーションという体裁で、3人が各自持ち寄った曲を収録したもの)により、一気にテクノシーンのメジャーなアーティストとなりました。このBytesは他アーティストへも多大な影響を与え、ワープ10周年の際に、最も印象的なアルバムとして多くのアーティストがこれを挙げています。

Black Dog Productions – Bytes [1993]>| で次曲へ )

1993年にはNMEのBen Wilmot (ベン・ウィルモット)がテクノをダンスミュージックに置き換えて「Intelligent Dance Music」と表現します。

このような用語がインターネット上において幅広く使われだしたのは1993年の8月、Alan Parry(アラン・パリー)が「Intelligent Dance Music」についてディスカッションする為の新しいエレクトロニック・メーリングリスト、「Intelligent Dance Music list」 略して 「IDM List」の存在をアナウンスしてからでした。

 

その他の代表曲・関連曲

IDM誕生前夜の1990年、デトロイトテクノの重鎮にしてジャンル名称 Techno(テクノ)の名付け親でもあるホアン・アトキンスの早すぎた楽曲

Model 500 (Juan Atkins) – Ocean to Ocean [1990]

Orbital – Chime [1990]

エレクトロニック ミュージックがクラブや分野を越えることができることを証明した曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Belfast」。

Orbital – Belfast [1991]

初期のデトロイトテクノのSFサウンドを再加工、英国で最も重要なレーベルの 1 つであるWarp Recordsのサウンドの形成に貢献し、Boards of Canada、Vitalic、Aphex Twinへの道を切り開いた曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「LFO」。

LFO – LFO [1990] Bleep Tehcno:Warp Records

ジャズ、アンビエントバードサウンド、ローランド808ドラムマシーンのキック、エキゾチックでトロピカルなサウンドでイビザ島をスーパークラブへと形作るのに貢献し、バレアリックの基準となった曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されてる「Pacific State」。

808 State – Pacific State [1989]英

808 State – Cubik [1990] Bleep Tehcno

Aphex Twin – Polynomial C [1992] Abstract / Techno

LTJ Bukem – Demon’s Theme [1992] Intelligent Drum’n’Bass

Photek – ni ten ichi ryu [1995] Intelligent Drum’n’Bass

Boards of Canada – Everything You Do is a Balloon [1996]

実験的ポップミュージックによりアシッド ハウス、ドラムンベース、フォークトロニカを融合させ、大衆だけでなくダンスファンも魅了、RadioheadからAvalon Emerson、Death Gripsまで影響を与えた曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Hyperballad」。

Bjork – Hyperballad [1996]

Squarepusher – Beep Street [1997] Warp

竹村延和 – Bright Time To Come [1997]日本

坂本龍一 – Anger (Rare Force 2 Meg Mix) [1998]日本 Ninja Tune

IDMというジャンルを世界に紹介し、Squarepusher、Autechre、さらには Philip Glass のような現代音楽の作曲家にまで大きな影響を与えた曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Windowlicker 」。

Aphex Twin – Windowlicker [1999]英

Radiohead – Idioteque [2000]英

Fridge – Long Singing [2001]英

Playstation 2 – Rez Original Sound Track [2001]日/英/独/瑞

Adam Freeland – Fear 原曲を表示

オウテカが生み出した究極のGlitch(グリッチ)ソング、「ガンツ・グラフ」。

Autechre – Gantz Graf [2002] Glitch/IDM/Experimental:Warp Records

Plaid – Barbega [2003] Warp

Prefuse 73 – The End Of Biters – International [2004]米 Warp

Four Tet – A Joy [2005] Domino

レイ・ハラカミ – Joy [2005]日本

Plaid – Tekkonkinkreet Soundtrack [2006]

James Blake、The xx、Mount Kimbie などのポスト・ダブステップの先駆者となり、ブリトニー・スピアーズやテイラー・スウィフトのようなポップスターまでがサウンドを取り入れた曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Archangel」。

Burial – Archangel [2007]

Flying Lotus – RobertaFlack [2008]米 Warp

Lone – Airglow Fires [2013] R&S

The Chemical Brothers、Drexciya、Nine Inch Nailsなどの傑作を思い起こさせながら、英国のクラブミュージックが未来に向けて新たな道を切り開くことができることを証明、Ghost Culture や Kelly Lee Owensなどの基礎を築いた曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されている「Drone Logic」。

Daniel Avery – Drone Logic (produced by Erol Alkan) [2013] Phantasy

Ghost Culture – Mouth (produced by Erol Alkan) [2013] Phantasy

Clark (Chris Clark) – Unfurla [2014] Warp

Jamie xx – Sleep Sound [2014]

Phantasy Soundレーベルの設立者エロル・アルカンより
Erol Alkan – Sub Conscious [2015] Phantasy

IDM寄りと評されることも多いバイセップの初期傑作「Just」
Bicep – Just [2015]英(北愛)

Bjarki(ビャルキ) – The Lover That You Are [2016]アイスランド

Maribou State – Turnmills [2018]

2018年末にはクラブ系各誌でベスト10入りした「Spectrum」
Erol Alkan – Spectrum [2018] Phantasy

Jon Hopkins – Emerald Rush [2018] Domino

Lone – Blue Moon Tree [2018] R&S

Lukid – Drip [2019] Arcola (Warp)

Lukid · Drip


Floating Points – LesAlpx [2019] Ninja Tune

Bonobo – Linked [2019]

TB-303サウンドで旋律を奏でる気持ち良さ!そういえば黒田硫黄のカルト漫画「大日本天狗党絵巻」ではフランス語でICI=「ここ」の意味が解説されてましたね。

Fasme – ICI [2019]仏

Squarepusher – Terminal Slam [2020]英 Warp

Lawrence Hart – Try Repeat [2020]英

Jasper Tygner – Kashmer [2021]英

Whatever The Weather (Loraine James) – 17ºC [2022]英

Floating Points – Vocoder [2022]英

Aphex Twin – Blackbox Life Recorder 21f [2023]英 Warp

 

 

シェアありがとうございます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • カテゴリー

  •  

  •  

    イベント情報








    チャート情報











    データベース







    情報サイト



























    レーベル・レコード会社





PAGE TOP ↑